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鈴木教授へのインタビュー

はじめに

低温物理学研究室(以下、低温研)のリーダーである鈴木教授に筆者(低温研大学院生)が研究のこと、ご自身のこと、求める学生像について伺いました。低温研を理解する上で参考にして頂けたらと思います。

研究について

IMG_1091.JPG低温物理学研究室の“低温”の意味ですが、学部生には馴染みが薄いと思います。どういった意味だと捉えればいいですか?

まず 熱力学第三法則は誰でも知っているよね?

確か、エントロピー増大の法則でしたか。

それは、第二法則!

ダメだ(笑)。熱力学は学部生の間に修得済みのはずなんだけどなあ。
そうでなく、第三法則は絶対零度でエントロピーがゼロになる、ということです。

そうでした(苦笑)、後で復習しておきます。

(話を戻して)絶対零度でエントロピーがゼロになるということは、「全ての物質は絶対零度までに縮重が解けて秩序状態を持つことができるようになる」という見方をすることも出来るよね。
つまり 物質を”低温”にすることで、物質が本来持ちうる基底状態や秩序状態を知ることが出来るようになる。また、高温の物質では熱による擾乱によって物質の量子力学的な本性を見ることが出来ないが低温ではこれが可能になるということです。

このように 低温研では物質を低温にすることで量子状態を具現化させたり、秩序を起こしたり、秩序を引き起こす相互作用を調べたりすることで、物質の量子力学的な本性を明らかにすることや新奇な物質の探索などを行うことを目的としています。

研究はどんな手法を用いて行っているのですか?

“多重極限”という、極低温・強磁場・超高圧装置を駆使した実験が特徴だね。物質の特性(物性)の殆どは、原子核ではなく その周りに存在する電子の磁気的・電気的性質や固体が持つ構造に大きく左右される。だから磁気と電気と構造を制御すれば、ほとんどの物性を調べることが可能になります。

低温研は実験装置も豊富にありますよ。希釈冷凍は20mK、超伝導マグネットは18T、超高圧装置は10GPaまで発生でき、それらを複合的に使う事が出来るよ。そういう環境下において主に弾性率、磁化率、誘電率、比熱、電気伝導率といった熱力学量や物質の対称性・格子定数の測定を行っている。弾性率測定装置は、世界屈指の相対分解能を有する装置を自ら開発して稼働させています。
結晶構造の測定については、格子の対称性を決めるのが容易なラウエX線装置や2Kから800℃まで、1000Kにもおよぶ温度域で測定が可能なX線回折装置があります。

具体的には、どんなテーマに注目して研究を進められていますか?

いろいろやっているけど、科学研究費補助金を頂いている「巨大振幅原子振動に基づく新規の電子相の開拓」と「強弾性を加えたマルチフェロイック物質の探索」が大きなテーマだね。それから、「ポメランチュク不安定性(電子ネマティック相形成)の超音波分光法による検出」や「モット絶縁相を有する強相関電子系の多重極限物性」なども力を入れています。

また、うちの研究室の准教授をしてくれている八木先生は、2010年度ノーベル物理学賞を受賞したグラフェンの試料を自ら準備し、自身が持つメソスコピック物理学の実験スキルを駆使して、ディラック電子にかかわる量子状態の詳細を研究しているよ。低温研のテーマは幅広いでしょ。

自分の話に戻るけど、新奇の電子相の開拓に関しては、重い超伝導状態や軌道秩序状態、熱電変換機能といったキーワードで今後の持続可能(サステイナブル)な社会形成に貢献できる“エキゾティックな物質”の探索を目指して、磁性物理学研究室の高畠先生をはじめとして先端物質科学研究科、理学研究科、総合科学研究科の先生方、広島大学自然科学研究支援開発センター、先進機能物質研究センターなど各種センターの方々、とも協力体制をとって研究を進めているよ。

マルチフェロイック物質とは、交り合わないはずの強磁性秩序や強誘電秩序などが互いに相関を示す物質のことを指している。通常、強磁性と強誘電性の間の相関が考えられているけど、細かいことを言うと、それじゃ“デュアル”フェロイックになっちゃうよね。
そこで僕は“強弾性”を加えた本当の“マルチ”フェロイック物質を探索しています。


応用としてはどんなものが考えられますか?

(マルチフェロイック物質の場合)応力や歪みを用いて電子のスピンや誘電性をコントロールすることができ、またその反対に電場や磁場を用いて構造を変化させることが可能になる。
応用としては全く違うロジックで動作する新奇のスイッチング素子や全く新しい量子デバイスが考えられる。スイッチング素子と聞いてピンと来ないかもしれないけど、トランジスターもスイッチング素子の一つと言えば何となく分かっていただけるのではないかな。ちょっと飛躍があるけど、八木先生の研究とも併せて、将来全く新しい論理で動くパソコンが出来る可能性だって拓けてくるかも。

ご自身について

IMG_1086.JPGこれまでは、研究室でのお仕事についてお伺いしました。今度は、鈴木先生ご自身について、研究室を少し離れたところでは、どのような活動をされていますか?

ちょっと意外なところでは、宇宙物理は専門でも何でもないのに、2008年に打ち上げられた月周回衛星「かぐや」の名付け親になってます。まあ、「かぐや」は2009年6月に月面に落下させて もう存在しないんだけどね(笑)。もっと、月の周りとぐるぐる回しておいてほしかった。

それから、学内外の多くの方々のご協力によってラッキーなことに、今年は、科学技術分野において顕著な成果を収めた人に与えられる「平成22年科学技術分野の文部科学大臣表彰」を頂くことができました。ご協力下さった多くの関係者の皆様方に、心よりお礼申し上げます。  

また、21年度に申請・公開した特許が社会的に大変評価されたらしいです。「2009年度の研究機関特許資産ランキング(民間の特許分析会社「パテント・リザルト社」による)における、2009年度の広大の躍進にも大きく貢献していると、学外の方から教えて頂きました。

ちょっと前の話になりますが、今話題の、検察審査会会長もしたことがあります。

求める学生像について

IMG_1096-2.JPGどんな学生に来て欲しいとお考えですか?

低温研が求める学生像としては、できれば、下に書いたことで一つでも該当がある人がいいかな。

・物理が好きな人
・積極的に大学院進学を目指している人
・(セミ)プロ意識を持って研究できる人
・他人との共同作業が出来る人
・もの作りが好きな人

だけど、学部で習ったことがちゃんと理解されていれば、何の文句もございません(笑)。

あとは、低温研に来た自分を想像して、ワクワク出来そうだと思える人に来てもらいたいかな。

(研究生活は)ワクワク出来ますか?

うちにきたら、必ずワクワク出来ると思うよ。だって僕は「科学わくわくプロジェクト」で文部科学大臣表彰を頂いているから(笑)。

おわりに

sotsu6-1.JPG最後に進学を考えている学部生にひとことお願いします。

みなさん、低温研に来て 一緒にワクワクしましょう。

本日はどうもありがとうございました。



▲ ページトップへ



※終わりに当たって、記者からもう少し低温研の客観的な事実を紹介すると、

・「卒業論文発表優秀賞」が平成10年に制度化されて以来、低温研は物理科学科で唯一受賞者を毎年欠かさず輩出し続けている研究室である。

・ここ5年間連続して女性の学部生が低温研に進学している。

色々書きましたが、低温研を理解するには研究室を訪問するのが一番です。お誘い合わせの上、気軽にお訪ね下さい。

研究内容について

研究について

IMG_1091.JPG低温物理学研究室の“低温”の意味ですが、学部生には馴染みが薄いと思います。どういった意味だと捉えればいいですか?

まず 熱力学第三法則は誰でも知っているよね?

確か、エントロピー増大の法則でしたか。

それは、第二法則!

ダメだ(笑)。熱力学は学部生の間に修得済みのはずなんだけどなあ。
そうでなく、第三法則は絶対零度でエントロピーがゼロになる、ということです。

そうでした(苦笑)、後で復習しておきます。

(話を戻して)絶対零度でエントロピーがゼロになるということは、「全ての物質は絶対零度までに縮重が解けて秩序状態を持つことができるようになる」という見方をすることも出来るよね。
つまり 物質を”低温”にすることで、物質が本来持ちうる基底状態や秩序状態を知ることが出来るようになる。また、高温の物質では熱による擾乱によって物質の量子力学的な本性を見ることが出来ないが低温ではこれが可能になるということです。

このように 低温研では物質を低温にすることで量子状態を具現化させたり、秩序を起こしたり、秩序を引き起こす相互作用を調べたりすることで、物質の量子力学的な本性を明らかにすることや新奇な物質の探索などを行うことを目的としています。

研究はどんな手法を用いて行っているのですか?

“多重極限”という、極低温・強磁場・超高圧装置を駆使した実験が特徴だね。物質の特性(物性)の殆どは、原子核ではなく その周りに存在する電子の磁気的・電気的性質や固体が持つ構造に大きく左右される。だから磁気と電気と構造を制御すれば、ほとんどの物性を調べることが可能になります。

低温研は実験装置も豊富にありますよ。希釈冷凍は20mK、超伝導マグネットは18T、超高圧装置は10GPaまで発生でき、それらを複合的に使う事が出来るよ。そういう環境下において主に弾性率、磁化率、誘電率、比熱、電気伝導率といった熱力学量や物質の対称性・格子定数の測定を行っている。弾性率測定装置は、世界屈指の相対分解能を有する装置を自ら開発して稼働させています。
結晶構造の測定については、格子の対称性を決めるのが容易なラウエX線装置や2Kから800℃まで、1000Kにもおよぶ温度域で測定が可能なX線回折装置があります。

具体的には、どんなテーマに注目して研究を進められていますか?

いろいろやっているけど、科学研究費補助金を頂いている「巨大振幅原子振動に基づく新規の電子相の開拓」と「強弾性を加えたマルチフェロイック物質の探索」が大きなテーマだね。それから、「ポメランチュク不安定性(電子ネマティック相形成)の超音波分光法による検出」や「モット絶縁相を有する強相関電子系の多重極限物性」なども力を入れています。

また、うちの研究室の准教授をしてくれている八木先生は、2010年度ノーベル物理学賞を受賞したグラフェンの試料を自ら準備し、自身が持つメソスコピック物理学の実験スキルを駆使して、ディラック電子にかかわる量子状態の詳細を研究しているよ。低温研のテーマは幅広いでしょ。

自分の話に戻るけど、新奇の電子相の開拓に関しては、重い超伝導状態や軌道秩序状態、熱電変換機能といったキーワードで今後の持続可能(サステイナブル)な社会形成に貢献できる“エキゾティックな物質”の探索を目指して、磁性物理学研究室の高畠先生をはじめとして先端物質科学研究科、理学研究科、総合科学研究科の先生方、広島大学自然科学研究支援開発センター、先進機能物質研究センターなど各種センターの方々、とも協力体制をとって研究を進めているよ。

マルチフェロイック物質とは、交り合わないはずの強磁性秩序や強誘電秩序などが互いに相関を示す物質のことを指している。通常、強磁性と強誘電性の間の相関が考えられているけど、細かいことを言うと、それじゃ“デュアル”フェロイックになっちゃうよね。
そこで僕は“強弾性”を加えた本当の“マルチ”フェロイック物質を探索しています。


応用としてはどんなものが考えられますか?

(マルチフェロイック物質の場合)応力や歪みを用いて電子のスピンや誘電性をコントロールすることができ、またその反対に電場や磁場を用いて構造を変化させることが可能になる。
応用としては全く違うロジックで動作する新奇のスイッチング素子や全く新しい量子デバイスが考えられる。スイッチング素子と聞いてピンと来ないかもしれないけど、トランジスターもスイッチング素子の一つと言えば何となく分かっていただけるのではないかな。ちょっと飛躍があるけど、八木先生の研究とも併せて、将来全く新しい論理で動くパソコンが出来る可能性だって拓けてくるかも。

自身について

ご自身について

IMG_1086.JPGこれまでは、研究室でのお仕事についてお伺いしました。今度は、鈴木先生ご自身について、研究室を少し離れたところでは、どのような活動をされていますか?

ちょっと意外なところでは、宇宙物理は専門でも何でもないのに、2008年に打ち上げられた月周回衛星「かぐや」の名付け親になってます。まあ、「かぐや」は2009年6月に月面に落下させて もう存在しないんだけどね(笑)。もっと、月の周りとぐるぐる回しておいてほしかった。

それから、学内外の多くの方々のご協力によってラッキーなことに、今年は、科学技術分野において顕著な成果を収めた人に与えられる「平成22年科学技術分野の文部科学大臣表彰」を頂くことができました。ご協力下さった多くの関係者の皆様方に、心よりお礼申し上げます。  

また、21年度に申請・公開した特許が社会的に大変評価されたらしいです。「2009年度の研究機関特許資産ランキング(民間の特許分析会社「パテント・リザルト社」による)における、2009年度の広大の躍進にも大きく貢献していると、学外の方から教えて頂きました。

ちょっと前の話になりますが、今話題の、検察審査会会長もしたことがあります。

求める学生像

求める学生像について

IMG_1096-2.JPGどんな学生に来て欲しいとお考えですか?

低温研が求める学生像としては、できれば、下に書いたことで一つでも該当がある人がいいかな。

・物理が好きな人
・積極的に大学院進学を目指している人
・(セミ)プロ意識を持って研究できる人
・他人との共同作業が出来る人
・もの作りが好きな人

だけど、学部で習ったことがちゃんと理解されていれば、何の文句もございません(笑)。

あとは、低温研に来た自分を想像して、ワクワク出来そうだと思える人に来てもらいたいかな。

(研究生活は)ワクワク出来ますか?

うちにきたら、必ずワクワク出来ると思うよ。だって僕は「科学わくわくプロジェクト」で文部科学大臣表彰を頂いているから(笑)。

おわりに

おわりに

sotsu6-1.JPG最後に進学を考えている学部生にひとことお願いします。

みなさん、低温研に来て 一緒にワクワクしましょう。

本日はどうもありがとうございました。



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※終わりに当たって、記者からもう少し低温研の客観的な事実を紹介すると、

・「卒業論文発表優秀賞」が平成10年に制度化されて以来、低温研は物理科学科で唯一受賞者を毎年欠かさず輩出し続けている研究室である。

・ここ5年間連続して女性の学部生が低温研に進学している。

色々書きましたが、低温研を理解するには研究室を訪問するのが一番です。お誘い合わせの上、気軽にお訪ね下さい。